児童虐待防止についての質疑

 

●共生社会に関する調査会

2002年4月3日


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○田嶋陽子君

 性的虐待について坪井節子さんにお伺いします。
 恩寵園という千葉県に児童養護施設があって、そのことは坪井さんも論文で取り上げていらっしゃるんですけれども、その中の少女の発言に、両親を失って養護施設で育って、そして独りで生きていくために売春を続けるしかなかった少女の事件。養護施設で育って、そして売春をしていくという。この少女が言っていることは、大人は悪魔だと思っていた、大人にはなりたくないと思っていたということですが、実際その恩寵園で起きたことは、施設長の息子が施設の児童に対して強制わいせつや婦女暴行をしていて、二〇〇〇年には懲役四年の実刑判決が言い渡されたわけですね。実際、この施設長の息子は、判決によると、一九九九年九月には十二歳の女の子の手を両手で触ってカメラで撮影して、別の日には強姦していたという、そういう事件で、この人は懲役四年になったわけですけれども。
 もう一つ坪井さんが言及していらっしゃるので、おじいさん、義理のおじいさんから性的虐待を一年以上受けていた十二歳の少女なんですが、これは先ほどもちょっとお話にあったように五年後に、時効二日前でこのおじいさんがきちんと罪を犯したことを認めて、そして懲役四年の実刑判決が出たわけで、そのときに、その少女は坪井さんに対して大人を信じて良かったと。大人を信じて良かったと言うのにこの少女の場合、後者の少女の場合でも五年掛かっているわけですね。
 これからまだ質問はいろいろあるんですが、今一つと言われました。三分以内なら二つでもいいんですね。
 一つは、坪井さんはこの少女と五年間かかわっていらしたわけですけれども、性的虐待を受けた子どもから話を聞くときにはどのような点に注意されているのか。これは先ほど不合理な話にも耳を傾けるとかいろいろありましたが、そのほかにもあったら教えていただきたいと思います。そして、同時に、被害者の子どもとの関係で最も重要視してきたことはどういうことなのかということです。
 それで、もう一つは、厚生労働省は被害を受けた子どもはその間各児童施設などでケアを続行してもらうと書いているんですけれども、私に言わせれば、施設長とか施設長の息子、実はさっきの恩寵園では施設長や職員が罰と称して子どもたちを乾燥機に入れたり、かまやバットや竹の刀で殴ったり、鳥の死骸と一緒に寝かすとか、そういうことをやっていたんですね、しつけの名において。
 そういう雰囲気のあるところで、たとえ加害者が罰を受けてそこにいなくなっても、私が思うには、その養護施設でそういう行為を全体に容認する何かの雰囲気とか何かがあると思うんですね。ですから、厚生労働省はそこでケアを、いろんな心理カウンセラーとか何かを出してケアをそこで受けさせるとあるんですけれども、私はそのことを非常に疑問に思うんですね。お三人の方、どなたかにお聞きしたいこと。
 それからもう一つ、厚生労働省はこういうことを言っているんですね。児童福祉施設内に苦情解決の仕組みを作れと言うんですが、私はこういう虐待を受けた子どもは、例えばオンブズパーソンのような人が来たって告白できないと思うんですね、後で、おまえ何言ったんだろうといじめられたら終わりですから。
 すると、この厚生労働省が言っていることは、もしかしたら血で血を洗うようなことを推薦するようなことにもなるんじゃないかと。私が子どもだったら非常に怖くてこんなシステムには乗れないなと思うんですけれども、その辺りもお話を伺えたらと思います。

  


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○参考人(坪井節子君)

 虐待を受けた子どもたちから話を聞くというのは、最初は言葉が全く出てこないところから始まります。それで、まずは自分がどういう人間かということを子どもに分かってもらう。そういう意味では、私は、弁護士として大人の相談者の前に座るより子どもの前に座るときの方がずっと緊張をします。子どもたちが私を選んでくれるかどうかというところから始まるという、そういう意味では非常に緊張するんですが。
 しかし、特に子どもたちが陥っている状態というのは、虐待を受けた子どもたちは、先ほどもちょっと申し上げましたが、自分が生まれてきたことは意味がなかったというところに陥っています。そして、自分が悪い子だから殴られたのだ、自分が間違った存在だったからそういう虐待を受けたんだという、物すごい自分を責めているのです。先ほど出た女の子も、私は生まれてこなかった方が良かったんだ、私はまともな大人にはなれないんだ、私は汚れ切った子なんだ、まともな恋愛もできないんだということでずっと自分を責め抜いて、そして自殺まで図った子だったんですね。ですから、私たちはまず、あなたが生まれてきたことは間違いじゃなかったんだよ、生まれてきて良かったんだよという、まず話を聞く前に、そこにあなたがいてくれること自体私たちの喜びなんだという、それを手を替え品を替え子どもたちに伝えるというところから始まっているというのが現実です。
 そうした中で、自分はここで受け入れられているんだ、虐待をされたことが間違っていたんだ、本当は生きていていいんだというところにまず行き着かないと子どもたちは重い口を開いてくれないんですね。ですから、そこまでの信頼関係を作るということが、ゆっくりゆっくり時間を掛けて、しゃべりたくなかったらいいんだよという中で話をしていく。
 でも、不思議なことに、一回二回これをやりますと子どもたちは話し始めますね。やはり子どもたちが人に対する、傷付けられるのも早いけれども、これは大丈夫だと思ったときの信頼回復は大人たちよりもずっと早いという、そこに私は希望を持っています。その意味では、子どもたちの回復の早さというのに、逆に言うと勇気付けられてこの活動をしているんですね。だから、全く絶望することないんです。いつも子どもに助けられます。
 それで、被害者の子どもとの関係の重要という、何を私がしていかなければいけないか。支援者としてと言うよりは、初めは、まず必要なのは、私なんかが体験したこともない苦しみをこの子は独りで耐えてきているという、敬意を払うということなんですね、子どもに対して。よくぞ生き抜いてきたねという敬意を払うという視点でまず子どもたちに対応することと、そして、この子どもたちが傷付けられた人間としての尊厳を回復したい、そのために私が何ができるかという視点で子どもたちと一緒に歩いていこうということだと思っています。
 その中で、子どもたちの中で最後に自分たちの中に持ってほしいのは、生まれてきて良かったんだという確信と独りぼっちじゃないんだという確信を持ってくれるようになれば、それが支援の最終目的じゃないかなというふうに思っているんですね。
 そういう意味で、傷付けられた人権の回復と言っちゃえばそういうことなんですが、別の言葉で言うと、生まれてきて良かったんだ、生きていていいんだ、自分の人生なんだ、独りぼっちじゃないんだという意味での人権の回復ということになろうかと思います。
 それから、ケアの問題なんですが、虐待が行われているような施設の中で、ケアという本当に矛盾した状況が今の児童養護施設の中にあるというのは事実であります。確かに、もちろんそうじゃない施設もたくさんあるわけで、すべてが恩寵園のような施設だとは言いません。ですから、大変難しい。ですから、とにかくまずは、施設の中でどのような状態に子どもたちが置かれているかをたくさんの人に知っていただくことからしか始まらないかなと。
 何人の子どもたちが一体何人の職員に見てもらっている状況か、その中で虐待を受けた子どもたちが今六割、七割を超えるような状況で職員の人たちがどれほどバーンアウト状況になってしまっているか、そして、今必要な支援は何なのか。物的、人的な施設の基準を上げないことにはもうどうにもならなくなっているというまず現場を知っていただいた上で、その中で虐待ケアは、もしかしたら養護施設に入る前に情短施設のようなところで短期的なケアも必要なのかもしれないというような気がしているんですね。養護施設に入る前のケアも必要なんじゃないかというふうに思っています。そうした意味での制度的なケアを考えていただきたい。
 それから、苦情解決の仕組みについてもちょっと申し上げておきますと、おっしゃるとおりなんです。それで、私もある養護施設の第三者機関の委員をしているんですけれども、ただ、毎月のように子どもたちに会いに行きます。そして顔見知りになっていって、なかなかそれを、子どもたちが自分の受けている苦しみをそこでよその第三者に語るというふうにはならないだろうとは思うんですが、そういった中でもしかしたら小さな声でも聞こえてこないかなということ。私に限らず、今、第三者委員になった人たちはそうした形で少しずつ動きを取り始めています。
 それから、東京都を始めといたします子どもの人権ネットというような電話相談ですね。施設の子どもたちに、匿名でもいいから施設名を言って相談ができるんだという、そのことを子どもたちに知らせておくという、そのシステム。ここで虐待が大分発見されてきましたので、施設内虐待が発見されたという実績がありますので、こうしたことの仕組みの整備も必要かというふうに思っています。





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○田嶋陽子君

 ペドファイル、小児性愛者についてお伺いします。汐見さんと坪井さん、よろしくお願いします。
 坪井さんは、特に日本人の小児性愛者、ペドファイルが海外で買春をしているその担当弁護士さんでもいらっしゃいますけれども、NGOの国際ECPATのロン・オグレディさんは「アジアの子どもと買春」という本の中で、典型的な小児性愛者というのは専門的な職業を持つ中年男性であるというようなことを言っているわけですね。もちろんすべてというわけではないですけれども、その中にそういう人たちが多いということで、特に、医者は小児科医の医者、それから教師、ソーシャルワーカー、宗教関係者、いずれもこの人たちは子どもたちを救う立場にある人たちですが、その人たちが小児性愛者だということで性的虐待をする可能性があるということですね。ボーイスカウトとか少年聖歌隊とか、最近も司祭さんが少年聖歌隊の少年を虐待していたということがニュースになりましたけれども、例えば、YMCAの子どもに関連した地域活動に参加している大人がそういうことをするということで、こういう人を教える立場、道徳的にしっかりしていないといけない人たちが就く職業に小児性愛者が多いということは本当に、さっき血で血を洗うという言葉を出しましたが、すべての職員がそうであるということではもちろんないんですけれども、児童福祉施設にもそういうペドファイルが、目的として入るかどうかは別として、現にいるということをどんなふうに考えていらっしゃるのか、それに対する対応策は日本ではどうなのか、あるいは外国で知っていらっしゃる対応策など、また御自身の御意見をお伺いしたいんですけれども、お願いします。


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○参考人(坪井節子君)

 私どもが当たった例でも、例えば外交官であったり、それから大学の助教授でして、それから小児科医を名のっている人、向こうでは小児科のお医者さんで通っていた人とか、ソーシャルワーカー的な人もいます。そういう意味で、おっしゃるとおり現実は、そういう人たちの中にペドファイルが多いかどうかは分かりませんが、いないことはないというのは実感です。
 非常に難しいと思っているんですが、なぜペドファイルになるのかというのも、これも今はまだ研究途上で、生来のやはりそういう人たちもいれば、自分ではそうではなかったんだけれども体験を重ねるうちにそちらにのめり込んでいった人もいるというようなことで、様々なこの治療法を今から考えなければいけないという状況だそうです。
 その意味で、私がすぐにここで解答は申し上げられないんですが、一つには、やはりホモセクシュアルということに関してが特にどうなんだろうかという問題を考えていく。それから、異性愛者であったとしても、とにかくホモセクシュアルであれ異性愛者であれ、そうしたものは別にマイノリティーとしてさげすまれるべきではないんだ、ただ、子どもに対してそういうことをすることが許されないのだというようなやはり社会内の意識を作っていかなければならないのかなというふうにまず思いますね。
 やはり、子どもの人権ということで、性侵害をされることの、子どもたちの被害の大きさというのを多くの人に知ってもらう。それ以上その人の嗜好性というものに関して踏み込んで、例えば就職の採用のときにどうこうするなんというのはとても難しいことだというふうに思うのです。それから、やはりそれを現場の教育の中で子どもの人権教育というものをしていくしかちょっと私も今、治療方法が見出せないというような状況です。


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○参考人(汐見稔幸君)

 率直に言って、なかなかというか大変難しい問題なんで、私はちょっとまだ判断ができないところがあります。
 今、坪井参考人もおっしゃっていましたけれども、歴史的に見たらホモセクシュアル、当然長い歴史があるわけで、それから小児性愛者も古代ギリシャからずっとあって、それは病的な性格だというふうに判断できるのかということになりますと、性的な関係というのは多様であったというふうな分析も実はあるわけですから、その辺のまず判断が私にはまだちょっとし切れないところがある。
 ただ、いずれであったとしても、子どもとの、例えば合意を全く抜きに、あるいは商売的な関係でそういう関係を強制するということに対しては、これは最大の人権侵害だと思いますので、それは私はかなり厳しい対応をしなければいけないというふうには思っていますが、ただ、そういうふうになる人の、何というか、精神というのがある種のやはり問題を抱えているということであれば、同時に治療的なプログラムということを併せて開発するというか、研究するということなしに断定するということはなかなか難しいので、私は、個人的にはちょっとまだ十分な判断ができないような状況でいます。

田嶋陽子の

「書アート

こもれる日々

      2017615日(木)~621日(水)

    ギャラリー      コンセプト21

 

         (港区北青山3-15-16              TEL03-3406-0466

 

2016年8月~予定

●ZEN展 

2016年

8月22日(月)

     ~29日(月) 

東京都美術館 

ロビー階第一展示室

東京都台東区上野公園8-36

TEL03-3823-6921

開館時間 9:00~17:30 (入館は17:00まで) 

 

●田嶋陽子書アート展

 ギャラリー花の妖精

2016年9月3日(土)

   ~ 9月11日(日) 

 

長野県軽井沢町

発地116-6 

電話0267-48-1273

田嶋陽子歌とトークショ 9/3(土)16時~

●CACA現代

      アート書展 

2016年9月13日(火)

    ~9月18日(日)

アートスペースリビーナ港区北青山3-5-25

表参道ビル4F

 

電話03-3401-2242

What's New

脳ベルshow(BSフジ)

1/20(水)22:00~

1/27(水)22:00~

 

 

田嶋陽子書アート展 & 歌

2016年

6月4日 土~7月24日 日 

笠間日動美術館 

企画展示館1階

茨城県笠間市笠間978-4 電話0296-72-2160

開館時間 9:30~17:00 (入館は16:30まで) 

休館日 月曜日

(祝日の場合は開館し、その翌日が休館)

★田嶋陽子歌とトーク 7/2(土)18時~ 

2016年

9月3日 土~9月11日 日

ギャラリー花の妖精

長野県軽井沢町発地116-6 

電話0267-48-1273)

★田嶋陽子歌とトーク 9/3(土)16時~